メリットの多い認定○○住宅って? ~認定長期優良住宅、認定低炭素住宅、ZEHについての損得~ その2
前回に引き続き、認定○○住宅について書いていきます。
認定長期優良住宅
認定長期優良住宅と認定低炭素住宅は、いずれも所管行政庁による基準をクリアした一定水準以上の家であると認定された住宅です。
参考までに、各項目の最低基準は建築基準法などの法律をクリアしているものを表すようです。
評価制度における基準は、それらを超えてなお良いということです。
認定長期優良住宅とは、長期に渡って良好な状態を保てるよう講じられた優良住宅のことです。
当初の建築の段階で優れているのはもちろん、長期間の使用を前提に、メンテナンスのし易さ、10年毎のメンテナンスの計画・実施も必要になります。
現役の設計士の方に、質問してみました。
認定長期優良住宅は、認定の際に重要な要件は、
①基礎の部分に使う鉄筋の数又は太さを増やす、②躯体(柱や梁)を頑丈にする
の2点だそうです。
他にもありますが、認定の際はこの2点を気を付けていれば何とかなるようです。
なお、認定に必要な具体的な基準としては、以下のとおりです。
①劣化対策…構造躯体が100年持つこと
②耐震性…建築基準法で想定する地震の1.25倍のものにも耐えること
③維持管理・更新の容易性…構造躯体以外の設備等が容易に点検保守をできること
④可変性…間取り変更が容易であること(マンションのみ)
⑤バリアフリー性…廊下の幅や段差などが考慮されていること
⑥省エネ性…省エネ性能が確保されていること
⑦居住環境…良好な景観の形成や
⑧住戸面積…戸建てで75㎡以上、マンション55㎡以上(例外あり)
⑨維持保全計画…点検計画の策定、10年毎の点検の実施
認定低炭素住宅
認定低炭素住宅は、地域ごとに設けられた①外皮の省エネ性能基準、②一次エネルギー(換算)消費量基準の2つの基準をクリアした住宅をいいます。
そして、最終的な定量的評価として、従来の省エネ法の省エネ基準より10%以上エネルギーコストを下げる必要があります。
①外皮の省エネ性能は、居住空間を囲む天井、壁、床、開口部(窓や玄関)などが、断熱性・遮熱性について数値化した基準をクリアするか。
⇒断熱材がたくさん使ってあって、窓が二重サッシになっていたりすることです。
②一次エネルギー(換算)消費量基準は、建築物に導入される設備機器に基準を設け、設計一次エネルギー消費量が基準一次エネルギー消費量を下回るか。
これは、建物本体の性能だけでなく、設備が省エネ性に優れているものである必要があります。
冷暖房設備、換気設備、給湯設備、照明設備において具体的に基準を設け、評価を行います。
エコキュートやエネファーム、省エネ基準★★★★★といった家電などを購入、使用する必要があります。
設計の段階で、家の設計に加え、設備として何を買うのかも最初に申請することになります。
具体的な基準としては、こちらも住宅性能評価制度の基準を準用することとなります。
その基準のうち⑤温熱環境に関すること(温熱環境・消費量エネルギーに関すること)において、最上級の等級5を獲得する必要があります。
今後の住宅業界について
住宅における省エネ基準については、2020年からは、新築住宅について義務化されます。
前記の認定低炭素住宅つまり、現時点での謳い文句である「省エネ」の家が、スタンダードになります。
これは、国が建築主や住宅メーカーに省エネの家を作れという要求をしていることになります。
省エネの家が造れないメーカーは、建築出来ないということになり、会社の存続そのものに関わります。
おそらく、中小企業のハウスメーカー、工務店などは、現状で準備を始めているところがほとんどだと思います。
どの業界もキャッチアップは必要ですね。
どの業界も生き残ることができるのは変わることができる会社だと思います。
コスパと税務上のメリットを考えると認定低炭素住宅、ただし、フラット35Sの優遇金利だけなら・・・
認定長期優良住宅を建てたいという方は、100年持続可能というだけあって災害に対する耐久性も優れていると思います。
その一方、認定低炭素住宅は、クリアする基準が断熱性や省エネ性だけで良いため、認定長期優良住宅に比べれば、ハードルは低いです。
また、認定低炭素住宅については、判定する項目が少ない分、評価機関の費用も少なく済みます。
税金などの優遇制度については、フラット35S金利Aプランの適用が同じで、
差が出るのは不動産取得税の控除金額が少し多い(1,200万円か1,300万円で、税額の差が出るのは数万円)か、
固定資産税の建物に係る2分の1減額の適用期間が2年延長されるかの違い(固定資産税のみであれば年数万円ほどの差異)です。
省エネであれば、初期投資が増えてもランニングコストの減少として跳ね返ってきます。
税務上のメリットにおいては、認定低炭素住宅であれば、認定長期優良住宅に準じた優遇が、比較的低コストで受けられるということになります。
なお、認定住宅におけるメリットとして挙げられるフラット35S金利優遇ですが、
認定住宅からは格が下がりますが、住宅省エネラベルという制度でも優遇が可能です。
こちらも2つの認定住宅と同じように評価機関に申請をし、金利引下げのための適合証明書を受けるものです。
金利引下げ、つまりはフラット35S適用のために評価機関を利用する場合は、
評価項目が最も少なく、評価機関への支払も少なく済むため、
コスパ的には最も有効であると言えます。
ZEHについて
ZEH(ゼッチ)とは、「Zero Energy House(ゼロ・エネルギー・ハウス)」の略です。
正式には、「Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」とNet(純)が付きます。
先程の断熱性・省エネ性能を高めた低炭素住宅を建ててエネルギー消費コストを減らす一方で、
太陽光発電などでエネルギーを創出する。
消費と創出でエネルギーコストが純額(Net)0になるような家を国が求めています。
言い換えれば、エネルギーの地産地消、エネルギーの自己完結が可能な家ということになります。
この制度の要件としては、家を建てるハウスメーカー等が、一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII)に登録されているZEHビルダーに登録されていることが必要です。
登録されていないとそもそも申請することすらできません。
エネルギーの創出においては、家で風力発電や地熱発電などは流石に出来ないため、実質的に太陽光発電の一択になります。
注意点としては、太陽光発電については、電力会社との契約において余剰電力買取制度と全量買取制度の2つがありますが、
ZEHの適用を受けるためには、余剰電力買取制度しか契約できません。
余剰電力買取制度の場合は、売電期間が10年となり、10kW以上の発電設備を設置する予定の方は、適用が受けられません。
(10KW以上でも余剰電力買取制度は選択可能ですが、買取期間が20年から10年になるため、お勧めできません。)
経済産業省の公表した「ZEH ロードマップ」において、
「「住宅については、2020年までに標準的な新築住宅で、2030年までに新築住宅の平均でZEHの実現を目指す」とする政策目標が設定されています。」とあります。
文章の表現からはっきりした意味は理解出ませんがw、これからZEHを住宅建築の標準としていこうということは理解できます。
ZEHに関してもう少し詳しく知りたい方は、同じく経済産業省の「ZEH普及に向けて」という資料をご覧頂ければと思います。
国がZEHを推進する上で、その普及にあたり補助金も交付されます。
平成28年10月時点で、残念ながら平成28年度のZEHの住宅に関する補助金の交付は既に終了しています。
補助金の額は、定額125万円(寒冷地仕様は150万円)、蓄電システムの導入には更に加算があります。
平成28年度は終了しましたが、国の政策としてZEHの建築を進めていくことを鑑みると、今後も縮小しながらも補助金の交付は続くのではないかと見込んでいます。
ただ、実務上ZEHの補助金を受けるためには、非常に厳しい審査を通過する必要があります。
まとめ
以上に書いてきた通り、日本における住宅の推移については、省エネが基本となっています。
今回紹介した認定長期優良住宅、認定低炭素住宅、ZEHですが、
評価機関の認定や補助金交付までを考慮した難易度としては、こんな感じになるようです。
ZEH>>>>>認定長期優良住宅>>認定低炭素住宅>>>その他の家
コストの面もそうですが、やはり仕様で制約が多いというのがネックになります。
認定を受けるために、自分の作りたい家から離れてしまうという方は無理に検討する必要はないでしょう。